排尿障害
排尿障害とは、おしっこの出が悪い、勢いがない、我慢ができず何度もおトイレに行くなどおしっこをするときに異常を感じる障害です。
泌尿器科に訪れる多くの患者さんがこの排尿障害を抱えていらっしゃいます。実際に排尿障害をともなう病気はどの様なものがあるのか、代表的なものをあげて説明していきます。
このページを読んで気になるなと思った方は泌尿器科の受診をおすすめします。
前立腺にかかわる病気
前立腺とは膀胱のすぐ下にある、くるみ程の大きさのもので男性にしかない臓器です。主な役割は前立腺液という精液の一部を作り出します。
前立腺は男性ホルモンとの関わりが大きいとされ高齢になっていくほど前立腺のトラブルが多くみられます。
前立腺の異常を知るためにはPSA検査(prostate -specific antigen)という採血による検査でPSAの値をみます。
50歳を超えたら健康診断、人間ドックなどで毎年PSA検査を行うと前立腺の病気の早期発見につながります。
前立腺炎
● 急性前立腺炎
何らかの細菌が尿道から入りこんで感染することでおこります。
前立腺炎の症状は排尿時の痛みなどの排尿障害に加え、高熱をともない全身の倦怠感や筋肉痛があることもあります。
急性前立腺炎の場合には抗生物質の投与により1週間くらいで治ります。
● 慢性前立腺炎
下腹部や腰のあたりなど前立腺周辺の痛み、頻尿などの排尿障害があります。
慢性前立腺炎の原因はまだはっきりとはしていないのですが、一番の原因とされるものは飲酒といわれており、わさび、からしなどの香辛類の刺激物も原因と考えられています。
また長時間の運転をするタクシー運転手さんやトラック運転手さんの職業病とも言われています。同様に長時間の自転車やバイクの運転も影響があるようです。
その他はストレスなど、その人の生活習慣に大きく関わりがあると言われています。
お薬の内服で改善はしますが、またすぐに症状を繰り返すのが慢性前立腺炎の特徴です。お薬の服用の他に原因として考えられる普段の生活スタイルの改善も必要になります。
前立腺肥大症
前立腺肥大症とは男性ホルモンの働きが関与しているとみられ、加齢に伴い前立腺が大きくなっていきます。
肥大した前立腺は尿道を圧迫するために排尿障害をおこします。30代で始まり、50代になると30%、60代で60%、80代になると90%の人にみられます。前立腺肥大になる原因としては加齢の他にも肥満や高血圧、高脂血症なども関係していると言われています。
前立腺肥大によってもたらされる排尿障害は尿に勢いがなくなる初期的な症状から、膀胱が過敏になることで頻尿になります。症状が進んでくると全く尿が出なくなる尿閉がおこります。
前立腺肥大症の治療は基本的にはお薬ですが、お薬を使わずに経過を観察する保存療法、お薬の効果が見られない時や尿閉や尿路結石など重い状態になると手術をすることもあります。
前立腺がん
前立腺がんはここ数年で日本でも患者数が増加しており、2025年には男性のがんの罹患率1位になるがんといわれています。60歳以降の人に罹ることが多く、前立腺がんの原因も前立腺肥大の原因と同じように日本人が長寿になり、食の欧米化にともなって動物性タンパク質の過剰摂取によることが考えられます。また近年におけるPSA検査の普及により発覚する人が多くなってきました。
前立腺がんは前立腺肥大と違い前立腺の外側にできるため初期の段階では排尿障害を起こすことは少なく無症状ですが進行してくると血尿や排尿時痛、頻尿などといった排尿障害が起きます。
また前立腺がんが腰の骨に転移していると腰の痛みを伴うこともあります。
治療法はPSAの値を監視し続けるPSA監視療法、ホルモン療法、放射線治療、手術治療などがあります。
膀胱に係わる病気
膀胱に係わる病気は男女ともに悩んでいる方が多いのですが、なかなか周囲に相談もできず病院で診てもらうことをためらってしまう人も多いようです。
膀胱に係わる病気は排尿障害を伴うため生活の質にも影響を及ぼします。
また排尿障害をたいしたことないと自己判断で過ごしていると膀胱に係わる重篤な病気に発展する恐れもあるため、早めに泌尿器科へ受診しましょう。
神経因性膀胱
おしっこをする時には膀胱から脳に「おしっこが溜まりました」「排出しましょう」という指令が伝達されます。
神経因性膀胱とは、その指令を伝えるための神経が異常をきたし正常におしっこをすることができなくなる、排尿障害を引き起こしている状態をいいます。
膀胱の神経には感覚神経と運動神経があります。脳卒中や糖尿病、パーキンソン病、椎間板ヘルニアなど病気や怪我によって感覚神経や運動神経が損傷されたことによっておしっこがしたいという尿意がわからなくなってしまったり、おしっこを排出する筋力が低下してしまう事があります。
過活動膀胱
過活動膀胱とは名前の通り膀胱の活動が活発に敏感になりすぎて必要以上に尿意をもたらす病気で、神経因性膀胱の一つです。
症状はおしっこを我慢することができずにトイレに何回も駆け込む、トイレまで我慢できずに漏らしてしまう、夜中に何度もおトイレに起きてしまうなどです。
過活動膀胱は男女ともに40歳以上の高齢の人に多く見られます。原因は膀胱から脳に伝わる神経の障害や女性においては出産による筋肉の緩みなどがあげられます。
治療は原因となる病気を特定し、その病気に対しての治療を行なった上でお薬の服用や骨盤底筋体操、留置カテーテル、排尿日誌など患者さんに適した治療法を行います。
またストレスを溜めないなど日常の生活を見直すことも大切です。
過活動膀胱は日常の生活にも大きな影響を及ぼすため、泌尿器科で専門医と相談しながら治療をすすめることをお勧めします。